研究概要 |
電子移動現象に対する理解を深め,分子レベルでさらに精密な制御を行うための「電子補助基」の開発と,それらを分子の特定の位置に組み込む方法について検討した。「電子補助基」の構造を変化させることにより,反応点に並列度に対応する数の異なる活性度を付与することが必要である。そのために,分子軌道計算を用いた「電子補助基」の分子設計を行い,それに基づいて実際に「電子補助基」の開発を試みた。本年度の成果として、動的分子内配位に基づく電子移動反応の制御法を開発し、それを利用した新しい電子補助基の開拓を行った。具体的にはピリジル基を分子内の適切な位置に導入することにより、ヘテロ原子化合物の酸化電位が著しく低下することを見出した。これはピリジル基がへテロ原子のラジカルカチオンに配位し安定化効果をもたらすためと推定される。この効果を利用してへテロ原子化合物の電子移動酸化の新しい電子補助基としてピリジルシリル基を開発した。現在、この概念をさらに拡張するとともに、複数の電子補助基を用いた新規分子変換の開拓を行っている。また、分子内に複数の電子補助基を導入した基質を合成し、その酸化還元電位の違いを利用して、1つの電子補助基のみを反応させる選択的な電子移動反応の検討も開始した。具体的にはヘテロ原子化合物に対して、ケイ素やスズなどの電子補助基を複数導入し、酸化還元電位を指標とした選択的な電解酸化反応を達成している。
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