研究課題
エンドウの休眠腋芽で発現している遺伝子群の探索を行った結果、休眠腋芽で特異的に発現している遺伝子の約95%がPsAD1であり、この遺伝子の休眠腋芽における役割の重要性が示唆された。これ以外にはLEA familyのように、種子の登熟期にABAに応答する遺伝子群が含まれていた。またこれまで種子特異的といわれていたエンドウのABI3ホモログが、休眠腋芽でも発現していることを確認した。これらの結果から、腋芽の休眠が種子、胚の休眠と基本的には同じ機構、即ちABAを介した経路により制御されている可能性を示唆した。もう一つのグループとして、ストレスやオーキシン欠乏、リン酸欠乏のような生長が抑制された条件下で発現する遺伝子のホモログも多数含まれていた。このことは、腋芽の休眠の状態を反映していると考えられた。モモ果実の果肉ディスクに対する胚珠および胚の影響、およびABA、ジベレリンの影響について検討した。果肉ディスクを寒天培地上でモモ胚珠と共存培養したところ、果肉ディスクの著しい肥大成長が認められた。またその反応は果実の発育段階により異なり、ジベレリン、ABA、オーキシンに対する反応とは異なるものであった。一方リンゴカルスを用いたアントシアニン蓄積機構の研究では、カルスにおけるアシトシアニン関連酵素の活性測定の系を確立した。また、セニフォスが果実着色を促進することから、カルスの着色とセニフォスの成分であるカルシウム、窒素、リン酸の影響を明らかにした。イネから単離したジベレリン2酸化酵素遺伝子OsGA2ox1を、イネの栄養器官型3β水酸化酵素遺伝子OsGA3ox2のプローモーター制御下で形質転換イネにおいて異所的に発現させた。得られた形質転換体はわい性形質を示す一方で、生殖成長、すなわち開花期、花器官形質、果実形質に影響が認められなかった。したがって本法は、果実生産を目的とした植物種においてわい性植物を作出する技術として、農業的、園芸的に極めて実用的であると考えられた。
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