研究課題
ABA生合成の律速段階を触媒するNCEDのcDNAを4種類単離した。PsNCED2、PsNCED3は休眠腋芽で発現し休眠解除後は一度発現が減少するが、その後再び主芽副芽ともに増加した。PsLEA4、PsAD1は休眠した副芽で、PsRD28Bは副芽主芽共に発現していた。一方PsABI3はこれまでに種子特異的な転写因子と考えられていたが休眠腋芽でも発現しており、頂芽切除後は発現が減少するが再び休眠する副芽で発現することから、休眠とPsABI3の発現に相関が認められた。またサイトカイニン生合成の鍵となるisoPentenyl transferase(PsIPT5)が頂芽切除後の茎で発現することを明らかとした。PsIPT5は茎のオーキシン供給が断たれると発現し、逆にオーキシンが供給されると発現が減少した。また頂芽切除後の茎のサイトカイニン量もPsIPT5の発現と一致して増加した。アントシアニン生合成に関わる酵素であるPAL、CHI、およびUFGalTの活性に対するカルシウム、リン、窒素の影響について検討した。その結果カルシウム処理により明らかにアントシアニン蓄積が促進され、CHIおよびUFGalT活性の上昇が関与していることが示された。窒素はCHIやUFGalT活性に対して促進的に働いたにも関わらず、高濃度処理ではアントシアニン蓄積を阻害した。リンは低濃度ではアントシアニン蓄積を促進したが、高濃度では阻害した。その促進にはCHIとUFGalTの促進が関与していることが示された。これらの結果は、リンゴ果皮の着色制御にカルシウム、リン、窒素が酵素活性の促進を介して作用することを示唆している。また、リンゴカルスを用いることにより、'ふじ'リンゴの着色抑制にはCHIやUFGalTなどの酵素活性が極めて重要であることが明らかになった。
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