研究課題
基盤研究(A)
本研究は、将来の高品質果実の省力栽培による生産を可能にするために解明すべき重要な生理現象について、分子生物学的アプローチにより遺伝子レベルでその機構を明らかにすることを目的として行われた。具体的にとりあげたテーマは、落葉果樹の自発休眠に関する分子制御機構の解明、果実の発育・着色に関する分子制御機構の解明、落葉果樹のわい化に関する分子調節技術の開発である。これらについてそれぞれモデル実験系を構築したのち、各生理現象に関連しあるいは支配する遺伝子群を単離し、それらの相互関係を明らかにすることにより、各生理現象を制御している分子調節機構の解明を目指した。自発休眠を解明するモデル実験系として、アラスカエンドウの頂芽切除による腋芽の休眠打破現象を利用し解析を進めた結果、休眠の維持とその打破にはオーキシン、サイトカイニン、アブシジン酸(ABA)といった植物ホルモンが関与し、それらの相互作用により制御されていることが示された。今後はこれらの知見を果樹類の自発休眠研究へ応用・発展させていくことが望まれる。果実の着色機構を解明するモデル実験系として、リンゴ果肉由来の培養細胞を用いて解析を進めた結果、光条件や無機元素の施用とアントシアニン合成酵素の活性との間に興味深い相関が見出された。今後は本モデル実験系を、各酵素活性や対応する酵素遺伝子の発現調節の解析へ応用し、省力的な着色促進技術へ結びつけることが期待される。果樹のわい化を目的として、ジベレリン代謝酵素遺伝子を利用した分子調節技術を確立した。現在カンキツ、リンゴ、パパイアへの導入が図られているが、今後はこれまでわい化品種の作出が困難であった樹種において、わい性品種育成へのブレイクスルーとなることが期待される。
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