X線結晶構造解析に基づいたA-ファクターレセプターの構造と機能に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11306008
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 堀之内 末治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80143410)
• 研究分担者: 大西 康夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90292789)
• キーワード: A-ファクター / 微生物ホルモン / X線結晶構造 / 放線菌 / 抗生物質生産 / 形態分化

研究概要

低分子化学調節物質A-ファクターは、Streptomyces griseusの抗生物質生産、形態分化を超微量で制御する微生物ホルモンである、A-ファクターは、リプレッサーとして機能するレセプターに結合することによってレセプターを標的遺伝子から解離させ、その抑制能を解除させる。大腸菌で過剰生産させたレセプターを迅速に精製し、ハンギングドロップ法によって小さいながらも結晶を得た。さらにHg、Auによる重原子置換体の結晶によるデーターを解析中である。また、セレン置換体の結晶化に成功し、現在データ収集中である。
一方、A-ファクターレセプターの標的遺伝子として転写因子をコードするadpA遺伝子の他にもう1つの標的を同定した。この標的遺伝子の破壊は、培地中の炭素源に応答した気中菌糸形成に関与することが判明した。A-ファクター制御カスケードを明らかにすべく、AdpAの標的遺伝子を探索した結果、9種のDNA断片が取得され、そのうちの1つはシグマ因子をコードしていた。このシグマ因子遺伝子の破壊は、ストレプトマイシン生産や黄色色素の生産には影響を与えず、気中菌糸形成能のみが失活した。したがって、このシグマ因子はA-ファクター制御カスケード内にあり、形態分化にのみ必須な調節回路に存在することになる。
以上のように、A-ファクターレセプターのX線結晶構造を解くにはあと一歩のところにきている。A-ファクター制御カスケードの中心的な役割を担うレセプターおよびその周辺の「役者」達を明らかにすることで、カスケード全貌に迫れると考える。

研究成果

• [文献書誌] Dae-Kyung Kang: "Possible involvement of cAMP in aerial mycelium formation and secondary metabolism in Streptomyces griseus"Microbiology. 145. 1161-1172 (1999)
• [文献書誌] Yasuo Ohnishi: "The A-factor regulatory cascade leading to streptomycin biosynthesis in Streptomyces griseus : identification of a target gene of the A-factor receptor"Mol. Microbiol.. 34. 102-111 (1999)
• [文献書誌] Takashi Umeyama: "An AfsK/AfsR system involved in the response og aerial mycelium formation to glucose in Steptomyces griseus"Microbiology. 145. 2281-2292 (1999)
• [文献書誌] Tohru Yokokawa: "Involvement of amfC in physiological and morphological development in Streptomyces coelicolor A3(2)"Microbiology. 145. 2273-2280 (1999)
• [文献書誌] Sueharu Horinouchi: "The A-factor regulatory cascade and cAMP in the regulation of physiological and morphological development in Strptomyces griseus"J. Ind. Microboil. Biotechnol.. (印刷中). (2000)
• [文献書誌] Sueharu Horinouchi: "Cell-Cell Signaling in Bacteria (分担執筆)"American Society for Microbiology. 490(193-207) (1999)