研究概要 |
オオオサムシ亜属の種間関係については,昨年に続き側所的に分布するアオオサムシとシズオカオサムシの分布境界線を中心に解析を行った。ミトコンドリアDNAのND5領域1083bpの塩基配列により,アオオサムシの分布域からシズオカオサムシの分布域へ一方向の浸透が認められた他,近接するミカワオサムシ由来のミトコンドリアを持つと考えられるアオオサムシやさらにそのアオオサムシからミトコンドリアの浸透を受けたと考えられるシズオカオサムシの存在まで明らかになった。この3種に関しては浸透の方向はミカワオサムシ→アオオサムシ→シズオカオサムシというように一定となっている。異所的分化後の二次的接触を通した遺伝子浸透による網目状進化は分布境界域で大規模におこっているらしい。 森林害虫に関しては,ミトコンドリアDNAのCOII領域約320bpで変異の認められなかった各地のスギカミキリは核遺伝子ITSについて解析中,韓国国内のクリタマバチについては天敵の寄生蜂についてもミトコンドリアDNAで解析中である。中国西部でポプラの大害虫となっているツヤハダゴマダラカミキリとキボシゴマダラカミキリは分布境界域でミトコンドリアDNACOII領域で多型が認められ,形態的にも遺伝子的にも交雑をおこして雑種が広範に形成されていることが示唆された。両種については森林保護の観点から生態学的,生理学的研究も多くなされているが,今後は交雑の影響を考慮する必要がある。 水生昆虫に関しては,引き続き解析対象の種と遺伝子マーカーの選定中である。
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