研究課題/領域番号 |
11306013
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 終五 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40111489)
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研究分担者 |
平山 泰 日本学術振興会, 特別研究員
潮 秀樹 東京水産大学, 助教授 (50251682)
小林 牧人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183809)
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キーワード | 温度適応 / 筋小胞体 / 細胞小器官 / ホルモン調節 / 遺伝子調節 / 分子機構 / 魚類 / ミオシン |
研究概要 |
コイの筋肉は温度馴化に伴い、低音型および高温型のミオシン・アイソフォームを可逆的に発現する。このような変化はミオシンに限らず、筋小胞体などの細胞小器官や、種々の酵素および血清中のタンパク質にもみられる。このように、魚類は温度適応する際に、その生体成分を包括的かつダイナミックに変化させる。一方、温度情報が生体調節に至るまでには、種々のホルモンが働き、多くの遺伝子が関与していると考えられるが、その詳細は不明である。そこで本研究は、このような魚類の温度適応の分子機構の解明を目的とした。 まず、コイ速筋の低音型高温型ミオシン重鎖遺伝子につき、その転写領域の構造を決定するため、コイ・ゲノムライブラリーを構築し、ミオシン重鎖遺伝子のクローニングを行った。その結果、29種類のクローンが存在することが明らかになった。さらに、全てのクローンが骨格筋型ミオシン重鎖をコードすることが示唆され、コイ骨格筋ミオシン重鎖は多重遺伝子族によってコードされていることが示された。また、その配列類似性から、遺伝子の不等交換が行われた可能性が示された。さらに分子進化を検討したところ、コイ普通筋ミオシン重鎖遺伝子の多重性は、コイの祖先魚におけるゲノム倍加現象に起因している可能性が示された。 次に、低温飼育下で発現量が増加するコイ筋肉の水溶性タンパク質55kDa成分につき、cDNAクローニングを行い、ミトコンドリアATP合成酵素のβ-サブユニットであることを明らかにした。電気泳動分析の結果、本β-サブユニットの発現量は30℃馴化コイに比べて10℃馴化魚で約2倍高いことが示された。次に、ノーザンブロット解析でβ-サブユニットの転写産物量を調べたところ、10℃馴化コイでは30℃馴魚の約2倍と、先のタンパク質の発現量の変化は転写レベルで制御されていることが明らかとなった。
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