「環境ホルモン」の野生動物に対する影響とその作用機序の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11306021
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 藤田 正一 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10143314)
• 研究分担者: 石塚 真由美 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 ; 星 英之 大阪府立大学, 農学部, 助手 (30301188) ; 数坂 昭夫 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (00002113)
• キーワード: ゴマフアザラシ / クラカケアザラシ / オオワシ / オジロワシ / P450 / 甲状腺ホルモン / コイ / 二次卵母細胞

研究概要

北海道産アザラシ類、北海道々東に生息する猛禽類および藤沢市引地川ダイオキシン汚染地域に生息するコイに対する環境汚染物質の影響と作用機序を検討した。
1.ゴマフアザラシ、クラカケアザラシにおいて、同程度のコプラナPCBが検出されたにも関わらず、P450 1A様分子種の発現量は全く異なっていた。特にゴマフアザラシにおけるP450 1A様分子種の発現は、種特異的機構による誘導が示唆された。一方、血中甲状腺ホルモンの年齢変動は、加齢によるそれを明らかに越えており、環境汚染物質が成長や繁殖に深刻な影響を与えていることが予想された。
2.1998-1999年に回収したオオワシ、オジロワシの胸筋での残留環境汚染物質を測定した。他の有機塩素系化合物に比べ、10-100倍高濃度のPCBおよびDDT類蓄積が観測された。また、PCB異性体の蓄積パターンに年齢による変動が見られた。これら猛禽類のPCB汚染源と考えられるロシアSovolのPCB異性体組成と比較し、より難分解性の多塩素化PCB類がP450を始めとする異物代謝酵素によって代謝されることなく成長過程で蓄積されていることが考えられた。
3.1992-2000年に引地川水系に排出されたダイオキシン類は、TEQ値3.0gにも上る。排出流域に棲息するコイについて、肝膵臓におけるERODの高活性とCYP1A様蛋白の発現増加が明らかとなった。また、雌個体での生殖腺重量、血中エストロゲン量の減少と、卵巣中の二次卵母細胞の割合の減少も観測された。ダイオキシン類曝露がコイの産卵数や繁殖率等へ影響を及ぼしている可能性が考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Yoon, S., Kazusaka, A., Fujita, S.: "Accumulation of diacylglycerole in the liver membrane of Long-Evance cinnamon (LEC) rat with hepatitis."Cancer lettr.. 151. 19-24 (2000)
• [文献書誌] Yoon, S., Kazusaka, A., Fujita, S.: "FT-IR spectroscopic and HPLC chromatographic studies of CC14 -induced acute hepatits in rat"Biospectroscopy. 57. 267-271 (2000)
• [文献書誌] Teramitsu, I., Kazusaka, A., Fujita, S.et al.: "Identification of novel chtochrome P450 1A genens from five marine mannal species."Aquatic Toxicol.. 51. 145-153 (2000)
• [文献書誌] Chiba, I., Kazusaka.A., Tanabe, S., Fujita, S.et al.: "Negative correlation between plasma thyroid hormon levels and chlorinated hydrocarbon levels accumulated in seal from the corast of Hokkaido, Japan."Environ. Toxicol. Chem.. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] Yamamoto, H., Watanabe, Kazusaka, A., Fujita, S., et al.: "Antioxidant effect of DL-α-lipoic acid on coppeinduced acutehepatitis in Long-Evance cinnamon (LEC) rats."Free Radical Res.. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] Maruyama, Y., Teraoka, H., Kazusaka, A., Fujita, S.: "Inhibitory effects of endogeneous dopanergic neurotoxin, norsalsolinol on dopamine secretion in PC12 rat pheochromocytoma cells."Neurochem. Internal.. (印刷中). (2001)