研究概要 |
難消化性澱粉は広義の食物繊維に含まれ,小腸で消化吸収されずに大腸に進み大腸癌に対し抑制的にはたらく短鎖脂肪酸産生の基質となる他,最近ではその存在が肥満に対して抑制効果をもつとの報告がある。本年は昨年度に確立したendoscopic retrograde bowel insertion method(ERBI)による回腸末端における回腸液の採取を行い,回腸液中の難消化性澱粉の測定を行った。 大腸内視鏡を回腸まで挿入し,ガイドワイヤーを使用してダブルルーメンチューブを回腸に挿入,バルーンを膨らませて固定した。当初は難消化性澱粉とPEGを含む試験食を負荷していたが,PEGの吸収動態が難消化性澱粉と一致しないことが多いことが分かり,マーカーとして改にたPSPを使用することとした。回腸末端にPSP溶液を一定量持続的に注入,チューブから回収された回腸末端潅流液より回腸末端の難消化性澱粉量を経時的に測定した。 これまでの検討では経口摂取されたRSの回腸末端における回収率は36.2〜47.5%であった。全例で潅流開始後に回腸液中にRSが出現し始め、潅流終了時には回腸液中からRSは検出されなくなっており、経口摂取したRSはすべて回腸末端部に到達したものと考えている。回腸灌流法により高難消化性澱粉含有食品添加物に含まれるヒト消化管で消化吸収されない難消化性澱粉の割合を測定することが可能であり,回腸末端部に到達するRS量には個体による大きな相違は認めなかった。 次年度では,これまでの技術を活かして食物繊維を経口摂取させ,回腸末端液中での食物繊維量の測定を行う予定である。
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