研究分担者 |
下山 克 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (50312492)
坂本 十一 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (20292146)
菅原 和夫 弘前大学, 医学部, 教授 (80136788)
棟方 昭博 弘前大学, 医学部, 教授 (50003661)
中路 重之 弘前大学, 医学部, 助教授 (10192220)
|
研究概要 |
食物繊維が人の消化吸収機能に及ぼす影響を以下のように検討した。(1)まず、小腸液灌流法を用いて回腸末端部の小腸液の食物繊維(難消化性澱扮とペクチン)含有量を測定し経口摂取したそれと比較した。(2)大腸内の発酵によるカロリー摂取状況を評価するために食物繊維(難消化性澱粉、ペクチン、セルロース、ラクツロース)摂取後の呼気ガス(水素とメタン)を測定した。(3)^<13>Cにより標識された中性脂肪をペクチンとともに摂取させ、呼気中の^<13>CO_2と^<12>CO_2を測定してペクチンの中性脂肪吸収に及ぼす影響を評価した。 本研究で得られた主要な結果を列挙すると以下のようになる. 1.内視鏡的逆行性腸管挿管法を用いた小腸液灌流法による食物繊維の回収実験で,食物繊維の一種である難消化性澱粉の回収率は平均値±標準偏差値で345±9.7%であった。これは難消化性澱粉の食物繊維としての価値が平均でわずか34.5%しかないことを示唆した。また個体差が非常に大きく約20%の幅がみられた。 2.同様方法で同じく食物繊維の一種であるペクチンの回収実験を行ったところ,平均値±標準偏差値は88.4±10.5%であった。以上よりペクチンは難消化性澱粉に比較し,食物繊維としての価値はほぼ90%と高かった。しかし,難消化性澱粉と同様に20%以上の個体差がみられた. 以上より食物繊維はその種類によって真の食物繊維としての価値は大きく異なり,また個人差が大きいことが明らかになった。このことは食物繊維の真の値がin vivo系で明らかにされるべきであることを示唆し,また個人によって異なる消化吸収システムが食物繊維の真の値に大きく影響するものと考えられた. 3.食物繊維の大腸内における発酵パターンにはいくつか存在することが明らかになった。この相違は腸内細菌叢の種類と量、食物繊維の小腸通過時間・通過率及び食物繊維の種類に依存していると考えられた。 4.短時間における食物繊維の脂肪の消化吸収に及ぼす影響は,想定されているほど大きくないことが明らかになった。 食物繊維は1971年のバーキットの繊維仮説の提唱以来注目を浴びてきた。しかし,それは根拠のない健康ブームに乗っかった側面もあった。近年,食物繊維の種類分け,測定法が厳密化し,食物織維と健康に関する研究そのものも,より厳密化してきた。したがって,食物繊維の厳密な評価による,さらなる説得力のある研究が始まりつつある.本研究は食物繊維の評価を科学的に厳密に追及したものであり,今後のより成熟した食物繊維の研究に資するところ大であると信じる。
|