平成11-12年は9番染色体動原体領域の12のマーカーについて、DNAプーリング法を用いたゲノムスキャンをおこなった結果、DNAプーリング法は、迅速な初期スクリーニングとして有効であることが示唆された。この結果にもとづいて昨年度と本年度は1番染色体動原体領域の31のマーカーについてスキャンした。 対象:DSM-IVによって統合失調症と診断された100名と健常対照群100名 方法:おのおの100名ずつのDNAサンプルを約10ng/μlの濃度にする。オートメイティッドDNAシークエンサーのGENE SCANで得られたイメージをGENOTYPERで分析した。デルタAIP値にもとづくP値はDaniels et al. (Am.J.Hum Genet 1998)にしたがって計算した。すなわちデルタAIP=Dif/Dif+Comとした。 結果:31のマーカーのうち15のマーカーで結果が得られた。このうち10のマーカーにおいてデルタAIP値自体が大きくなり、デルタAIPのP値は、5%水準に達した。5%水準に達しなかった5つのマーカーにおいてもP値はほぼ5%に近い。たとえば目視でD1S2626やD1S2346は対照群と罹患群はほぼひとしいイメージが得られているが、AIPのP値は0.0824と0.0598となり有意水準にきわめて近い値を示した。D1S2768、D1S2844、D1S2696、D1S206のイメージでも両群に大きな違いはないようであるが、有意差を示した。それ以外の16マーカーでは多峰性のピークがみられ、そのままでは高いデルタAIPが得られたが、これは偽陽性結果と考えられる。このトラブルについて調査を行ったが原因を解明できなかった。可能性としてはロードするDNA量の調節が関係するようで、少なすぎれば検出できず、多すぎると多峰性となるようであった。
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