研究概要 |
独創的な分子生物学的アプローチによって世界に先駆け、腎炎発症において中心的役割を演ずるメサンギウム細胞の発現遺伝子プロファイルを作製し、メサンギウム細胞の機能特性の一部を分子レベルで明らかにできた。その過程で5つの未知のメサンギウム細胞特異的遺伝子(megsin,meg-1,-2,-3,-4と命名)の単離同定を行った。これら遺伝子の腎臓における機能遺伝子としての可能性を検討したところ、1)megsinはメサンギウム細胞に高発現し、既知のセリンプロテアーゼインヒビター(serpin)と高い相同性を有する未知の蛋白をコードする新規遺伝子で、メサンギウム増殖性IgA腎症でその発現が冗進すること、2)meg-1はprotein serine/threonine phosphatase 4(PP4)の調節ユニットと高い相同性を有する蛋白をコードする遺伝子で、腎疾患モデルラットにおいてラットmeg-1はメサンギウム細胞増殖に伴ってmRNA発現が亢進すること、3)meg-2は185個のアミノ酸からなる蛋白をコードする遺伝子で、その機能は不明であるが、線虫が有するmeg-2相同分子は発生の初期に高発現すること、4)meg-3はC末端にSH3ドメインに結合すると予想される高プロリン領域を有する蛋白をコードする遺伝子で、meg-3遺伝子導入細胞においてチロシン残基リン酸化が亢進することから新規細胞内シグナル伝達物質の可能性が考えられること、5)meg-4はATP依存性メタロプロテアーゼに共通なATP結合モチーフ、ATPases associated with different cellular activities(AAA)モチーフ、Zn結合モチーフを有するAAA protein familyに属する新規蛋白をコードする遺伝子であることなどが示された。
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