研究概要 |
アンドロゲン受容体(AR)の新規のAF-1特異的共役因子遺伝子のクローニングを目的として以下の事項を検討した。 (1)キメラ受容体を用いた機能解析 AR遺伝子に異常の存在しない完全型精巣性女性化症の皮膚線繊維芽細胞においてARおよびGRのAF-1ドメインとAF-2ドメインを入れ替えたキメラ受容体をレポーター遺伝子とともに導入し、正常と本症例で転写活性化能を比較した結果、本症例ではARのAF1ドメインからの転写活性化シグナルの基本転写装置への伝達が途絶していることが判明した。このAF1からの転写活性化シグナル伝達障害は既知のAF2特異的共役因子(p300,TIF2,SRC-1,ARA70)あるいはAF-1特異的共役因子(SRA)の強制発現では回復できなかった。この結果はARのAF1に特異的な未知の因子が本症例では欠損していることを強く示唆するものである。 (2)GSTプルダウンアッセイによるAR-AF-1特異的共役因子の分子量の解析 GST-AR-AF-1とGST-AR-AF-1蛋白をバキュロウィルス系で調製、これらに結合する蛋白を、上記患者および正常対照群の皮膚線維芽細胞抽出液からGSTプルダウンにて検討したところ、SDS-PAGE上、S90KDaの蛋白が、本症例では欠失していることが判明し、今後のクローニングの糸口を得ることができた。 (3)共焦点顕微鏡による高性能3次元画像構築システムの作成 ARとGFP(緑色蛍光)とのキメラを作成し、発現させた細胞を多数の断層面で撮影、3D構築用コンピューター処理により3次元画面に再現する手法を開発し、リガンド依存性に活性化されたARは核内レセプターに分布するのではなく特定の領域にドット状に分布することを明らかにした。
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