SIRSおよびCARSの観点からみた急性膵炎の重症化機序の解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11307020
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
• 研究分担者: 廣田 昌彦 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (80284769) ; 山口 康雄 熊本大学, 医学部, 助教授 (90253757) ; 守 且孝 熊本大学, 医療技術短期大学部, 教授 (10040213)
• キーワード: 急性膵炎 / SIRS / CARS / サイトカイン / サイトカイン拮抗物質 / 臓器障害 / 感染 / second attack

研究概要

炎症性サイトカインによって起こる全身性の炎症病態がsystemic inflammatory response syndrome(SIRS)である。一方、炎症性サイトカインが産生されSIRSとなると、同時にSIRSを遷延させないようにサイトカイン拮抗物質が誘導される。このサイトカイン拮抗物質が大量に産生されている時期をcompensatory anti-inflammatory response syndrome(CARS)と呼ばれる。
SIRS時には、サイトカインにより全身の血管内皮細胞、好中球が活性化され、その相互作用の結果、全身の遠隔重要臓器に好中球が集積する。強い侵襲反応時(severe attack)や、感染などによるサイトカインの再誘導(second attack)時には、遠隔臓器に集積した活性化好中球から好中球エラスターゼなどの中性プロテアーゼや活性酸素が放出され、遠隔重要臓器の障害が引き起こされることが判明した。
一方、大量のサイトカイン拮抗物質の産生によりサイトカイン反応が抑制されているCARSの時期に、盲腸の結紮穿刺(cecal ligation & puncture: CLP)による細菌性腹膜炎を惹起すると、無処置ラットにCLPを行った場合に比して、CLP24時間後の致死率が有意に上昇した。サイトカイン反応が抑制されたCARSの時期には感染防御能が減弱していることが判明した。
以上のように、本研究により、SIRSは過度の炎症反応から、CARSは感染から、臓器障害へと伸展しうることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Yamaguchi Y,et al.: "Platelet-activating factor autogonist (TCV-309) attenuates the priming effects of bronchoalveclar macrophages in cerulein-induced pancrentitis rats."Pancreas. 18. 355-363 (1999)
• [文献書誌] Yamaguchi Y,et al.: "The novel carboxamide derivative (IS-741) reduces neutrophel chemoattractant production or bronchoalveclar macrophages in rats with cerulein - induced pancrentitis complicated by sepsis."Digestion. 60(Suppl 1). 52-56 (1999)
• [文献書誌] Liang J ,et al.: "The novel carboxamide derivative (IS-741) attenuates lung injury in rats with cerulein - induced pancreatitis complicated by sepsis."Dig. Dis. Sci.. 44. 341-349 (1999)
• [文献書誌] 小川 道雄: "局所のSIRS,全身のCARS-新しい概念の提唱-"救急医学. 23. 1924-1927 (1999)
• [文献書誌] 広田 昌彦,他: "重症急性膵炎の初期治療としてのトリプルケア"消化器科. 29. 121-126 (1999)
• [文献書誌] 広田 昌彦,他: "Second attack前後におけるサイトカイン反応の変化"Surgery Frantier. 6. 38-44 (1999)
• [文献書誌] 小川 道雄(編著): "知っておきたい侵襲キーワード"メジカルセンス(東京). 242 (1999)
• [文献書誌] 小川 道雄,他(編著): "外科分子病態学"医学書院(東京). 350 (1999)