研究概要 |
肝硬変を伴う肝切除症例において,レプチンの肝再生能に対する影響を検討するにあたり,平成12年度は前年に引き続きprospectiveに症例を選択し,通常の検査のほかに,術前日・術後2日目・術後21日目の血中レプチン濃度の測定,術前日・術後21日目での肝volumemetryを施行した.解析可能な症例数は約25症例となった。血中leptin濃度はZ0症例よりもZ1症例の方が高い傾向を認め,切除率と肝再生率との正の相関を確認した.しかし,leptinの生理的特徴上,男女分別した評価が必要なだけでなく,対象を耐術可能な症例に限っているため内訳としては進行肝硬変症例(Z2)が少なく,正確な評価のためには今後更なる症例の蓄積が必要と考えられる.加えて,切除術式も複数にわたるため再生率の評価には更に時間がかかると考えられる. 次いで,基礎的実験として,ラット肝硬変モデルにおけるレプチン産生・レプチン受容体(Ob-R)の解析をおこなった.雄性SDラットにthioacetoamide(TAA)の腹腔内投与を8週間にわたって行い.2週間休薬の後,血液・肝臓の採取を行い解析した.TAAの濃度依存性に肝線維化が亢進することが確認でき,病理学的所見上,人間の肝硬変における,Z2,Z1に相当する肝線維化を安定して作成することが可能となった.加えて,ELISAを用いた血中レプチン濃度の測定,VRT-PCRおよびWestern blottingを用いた肝臓でのレプチン・Ob-Rの発現の確認を開始しており,肝線維化の進行度に対するレプチン・Ob-Rの寄与の有無および作用機序を解析中である. ラットでの解析結果に基づいて,臨床の肝臓のサンプルにおいても同様の評価を行い.肝臓でのレプチン・Ob-Rの発現と肝切除後の残存肝の再生率との相関を検討し,レプチンの肝再生能に対する影響を解析し,次年度にはその機能解析を行う予定である.
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