研究概要 |
遺伝子異常に基づいた悪性グリオーマの再分類とそれによる治療体系の確立のために、悪性グリオーマの発生と進展に深く関与すると考えられているp53のmutation、p16のhomozygous deletion (HD)、EGFRのamplificationおよび10番染色体のloss of heterozygosity (LOH)を解析した。 対象はastrocytic tumors 225例(pilocytic astrocytoma (PA)15例、diffuse astrocytoma (A)20例、anaplastic astrocytoma (AA)55列、glioblastoma multiforme (GBM)135例)である。 PAでは一部の例外(NF1合併例)を除いて明らかな遺伝子異常は認めず、p53のmutationはAの29%、AAの50%、GBMの35%に、p16のHDはAAの10%、GBMの31%に、EGFRのamplificationはAAの9%、GBMの31%に、10番染色体のLOHはAAの36%、GBMの63%にそれぞれ認められた。これらのうち10番染色体(特にPTEN遺伝子領域)のLOHはGBMにおいて有意な予後不良因子であり(Tada K, et al.: J Neurosurg 95,2001)、またp16のHDは男性のGBMにおいて予後不良因子であった(Kamiryo T, et al.: J Neurosurg (in press),2002)。 4つの遺伝子異常の組み合わせでは、悪性グリオーマは主として7つの亜型に分類され、これらのうちEGFRのamplificationと10番染色体のLOHを併せ持つものは特に予後が悪く、このような症例は遺伝子治療を初めとした新しい治療法の対象になると考えられた。
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