研究概要 |
1.SEREX法を用いたヒト骨肉腫腫瘍抗原分子の同定:骨肉腫腫瘍組織,自家血清を材料とし,SEREX法を用いて骨肉腫腫瘍抗原分子の同定を試みた.Procollagen type I,c-myc結合蛋白と相同性の高い遺伝子を含む8遺伝子が同定された. 2.発現クローニング法を用いたヒト骨肉腫腫瘍抗原分子の同定:ヒト骨肉腫細胞株 OS2000とそれを特異的に傷害するT細胞クローン(CTL)を用い,expression cloning法により骨肉腫腫瘍関連抗原のクローニングを行った.HLA-A24,B55拘束性で約1900bpの遺伝子配列からなる分子を同定した. 3.B7遺伝子ファミリーの導入(補助信号の増強)による抗骨肉腫腫瘍免疫の誘導:Tリンパ球活性化の補助信号分子であるB7-1遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込み,ラット骨肉腫腫瘍組織内に直接投与した.腫瘍増殖,肺転移は有意に抑制された.B7-1の3種のspliced formの中では,B7-1aが最も効率よく,腫瘍免疫を誘導する補助信号分子であった. 4.ヒト骨肉種におけるErbB2(HER2/neu)蛋白の発現と肺転移・予後との関連性の解析:骨肉腫におけるErbB2蛋白の発現は,原発巣に比べ肺転移巣で低下していた.また,ErbB2の発現は骨肉腫の独立した予後良好因子であった. 5.骨肉腫の増殖,転移と血管新生因子の関連性の解析:原発巣で血管新生誘導因子(VEGF)の高発現がみられる骨肉腫では,有意に肺転移が多発した.血中のVEGF濃度が高い例では,原発巣の術後2年以内に肺転移が出現する危険性が高かった. 6.Ewing 肉腫特異的融合遺伝子(EWS-ETS)によって誘導される遺伝子群の同定:EWS-ETS遣伝子導入により発現が亢進する遺伝子をDNAマイクロアレイを用いて解析した.細胞外基質を構成する糖タンパクであるTenascin-Cの発現が亢進していた.
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