前立腺癌の進展に関連した抑制遺伝子を臨床検体からクローニングすることは、その手術症例数が比較的少ないことや癌組織の採取が難しいこと、また癌組織における癌細胞やその組織構築の多様性などにより非常に困難である。我々は肺に高率に転移するラット前立腺癌細胞にヒト染色体を1本導入し、その肺転移能などの性状の変化を指標としながら転移抑制遺伝子をクローニングする方法を開発した。前立腺癌の転移を抑制する遺伝子をクローニングすることができれば、癌の悪性度の診断や、将来的には遺伝子治療にも応用できる可能性がある。 この方法を用いて8p21-p12に転移抑制遺伝子が存在することを示したが、この転移抑制遺伝子を含むと思われる約60Kbのバクテリア人工染色体を同定し、論文として報告した。塩基配列を解析したところ、そこには1個の未知の遺伝子が存在しており、その遺伝子全長を含むcDNAを単離し解析した。また、同様の方法を用いて17番染色体より同定されているMKK4遺伝子の発現が、前立腺癌の進行と逆相関していることを示し、論文として報告した。また、11p11.2より同定したKAI1転移抑制遺伝子も前立腺癌の進行と逆相関していることを示していたが、このKAI1蛋白の発現調節の一部にメチレーションが関与していることを示し、論文として報告した。 前立腺癌臨床検体の解析について、我々の施設における結果や海外における報告例をまとめると、第8番染色体の短腕のLOHの他、第10、13、16、18番染色体などにおいてもLOHが高率に認められており、癌進展との関連性を示すことができた。さらに、12番染色体短腕にもLOHが認められることを示し、この領域に癌抑制遺伝子が存在する可能性を論文としてまとめた。その他、CD44遺伝子のメチレーションが前立腺癌の進行や転移と関連していることも示し、論文として報告した。
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