研究概要 |
今年度は発声機能検査装置(SK-99)を用いて、正常者ならびに放射線治療を行っている喉頭癌患者の発声時の声のフォノグラムによる喉頭調節域の評価と、音響分析によるデータとの比較検討を行った。音響分析装置はCSL-4100を使用し、採用したパラメターはPPQ、APQ、NHRの3つである。 検討の結果、聴覚印象で正常と判析されPPQ、APQ、NHRが正常範囲内にあるものを健常発話者としてフォノグラムの解析を行うと、話声位のみの聴覚印象や音響分析によって正常音声とされる健常者においても、phonogramのパターンは一定ではなく、各被検者の発声機能の特徴を反映しているものと考えられた。しかし、同一被験者ではそのパターンの再現性が高いことが確認された。 また早期声門癌患者12名の放射線治療前後の音声評価を、フォノグラム、音響分析を用いて治療経過との関連を解析した。検査項目は、音響分析によるPPQ,APQ,NHRと、空気力学的検査としてMPTを、フォノグラムからはvoice range、50Hzでの平均および最小呼気流率、voice profileのパターンの解析とした。音響分析は最も楽な高さと強さで長母音/a/発声をさせ、安定した持続発声部約1秒を測定した。照射後の測定時期は照射後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年を原則とした。検討症例全体の傾向として、PPQ,APQ,NHRの改善にともない、フォノグラムでは各音域での声の強さの領域の拡大が認められた。照射6ヶ月後で平均・最小呼気流率の低下を認め、音響分析のパラメータの改善の時期と一致した。フォノグラムではvoice profileのパターンを視覚的にとらえることが可能であり、個人間ではばらつきがあるものの、同一症例の放射線治療後の経時的な発声機能の評価に有用であった。 ヴォイスプロフィールは発声機能検査の新しい方法として、一般臨床に有用であるとの結論が得られつつある。
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