研究課題/領域番号 |
11307039
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜田 茂幸 大阪大学, 歯学部, 教授 (60028777)
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研究分担者 |
中川 一路 大阪大学, 歯学部, 講師 (70294113)
川端 重忠 大阪大学, 歯学部, 助教授 (50273694)
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キーワード | A群レンサ球菌 / 莢膜 / ヒアルロン酸 / 上皮細胞 / 侵入 / hasA |
研究概要 |
A群レンサ球菌は化膿性疾患、リウマチ熱、糸球体腎炎等の原因菌であり、近年、壊死性筋膜炎を含む劇症型感染症を惹起することが注目されている。また、多様な病原因子を持ち、その一つに莢膜ヒアルロン酸が挙げられる。重篤な感染症ほど高頻度に莢膜保有株が分離されることから、組織侵入および食細胞に対する抵抗性に関して相関があると考えられる。そこで、莢膜ヒアルロン酸合成酵素(hasA)不活性変異株を作製し、野生株と比較して致死毒性および細胞への侵入性について検討した。 変異株は染色体上のhasA遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子を挿入し、不活化することにより作製した。電子顕微鏡による観察では、野生株では莢膜が確認されるが変異株では確認されなかった。寒天培地上のコロニーを観察すると、野生株はムコイド様の形態を示したが、変異株では示さなかった。ヒアルロン酸を定量した結果、野生株では1 cfu当たり21.5 fgのヒアルロン酸が確認されたが、変異株では認められなかった。また、マウスに対する致死毒性では野生株は変異株よりも毒性が高かった。 次に、上気道感染のモデルとして、ヒト咽頭部由来上皮細胞HEp-2を用い細胞への侵入能について調べた。野生株変異株ともに細胞へ侵入し、変異株は野生株よりも10-1000倍多く侵入することがわかった。これは、菌体表面にはいくつかの付着因子が知られているが、莢膜ヒアルロン酸を取り除くことによりそれらの付着因子が菌体表面に露出し、細胞への付着が容易になり、結果として侵入した細菌の数が増えたためと考えられる。また、電子顕微鏡により細胞の微絨毛様構造物、細胞膜近傍の小胞形成などが確認され、菌の侵入は積極的なものであることがわかった。 以上より、A群レンサ球菌はヒト咽頭部由来上皮細胞に対し積極的に侵入することがわかった。また、莢膜ヒアルロン酸は菌の細胞への侵入を妨げるが、侵入した後は食細胞による取り込みを抑制することが明らかになった。 Microbial Pathogenesis 1999;27:71-80
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