研究概要 |
Streptococcus pyogenesの菌体表層には病原因子の1つである咽頭上皮細胞への付着および侵入に関与するフィブロネクチン結合タンパク(FBP)が数種類存在する.有効なワクチンを選択するため,数種類報告されているFBPの分布および発現の程度をM型の異なる菌株を用いて検討した.その結果,FBP54タンパクがすべてのM型菌に存在し,細菌表層に存在していることが明らかとなった.そこで,FBP54をターゲットとし,同タンパクの感染防御としての可能性を検討するため,組換えタンパク(rFBP54)を作製し,マウスへの投与による免疫応答を検索した. まず,実験室継代株のNY-5株からfbp54遺伝子をPCR法で増幅し,発現ベクターpTrc99に組み込み,rFBP54を作製した.同組換えタンパクをウサギに免疫し,抗血清を得た.rFBP54を6週齢のBALB/cマウスに2週間毎に4回コレラトキシンとともに経口投与し,あるいはフロイント完全アジュバントとともに皮下投与した.血清,唾液サンプル中の抗FBP54抗体価はELISA法により測定した.さらに,最終免疫日から3週間目に劇症型A群レンサ球菌感染症患者より分離した菌株をマウス腹腔内に感染させて,免疫群ごとの生存率を調べた. rFBP54の経口,皮下投与により血清中にFBP54特異的なIgG抗体が誘導された.経口投与群の唾液中には,特異的IgA抗体の誘導がみられた.劇症型菌株の感染実験では非免疫の対照群と比較して,rFBP54投与群が高い生存率を示した.これらの結果から,rFBP54投与はFBP54特異的な体液性免疫応答を強力に誘導し,感染防御に有効であることが示された. Infection and Immunity(2001)69,924-930
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