研究概要 |
1.A群レンサ球菌はヒト咽頭上皮細胞に侵入する事が明らかとなり,本菌の莢膜ヒアルロン酸はM型にかかわらず宿主細胞への侵入を抑制する作用がある. 2.フィブロネクチン結合タンパクであるFBP54遺伝子はすべてのA群レンサ球菌の染色体DNAに存在する.FBP54を抗原としてマウスに接種すると高い特異抗体価が得られ,A群レンサ球菌による感染に対して防御効果を示した.この結果より,同タンパクはA群レンサ球菌感染症に対する有望な感染防御抗原となりうる可能性が示唆された. 3.A群レンサ球菌の細胞侵入によりアポトーシスが誘導された.これは,宿主細胞のミトコンドリアの機能異常によるものであり,サルモネラおよび赤痢菌などの細胞内寄生細菌によるアポトーシスとは異なるメカニズムが存在することが明らかとなった. 4.新たに同定したフィブロネクチン結合タンパクであるFbaは3〜4回のプロリンリッチ領域をもち,同領域はブドウ球菌のフィブロネクチン結合タンパクFnBPAに高い相同性を示した.さらに,fba遺伝子はM1,2,4,22,28,49型菌に存在し,Mgaレギュレーターの支配を受けることが示唆された. 5.スーパー抗原であるSPE-AやSEBのマウスへの投与は,リステリアなどの細胞内寄生細菌による感染死を回避する働きが明らかとなった.この機能はCD4^+T細胞のリステリア特異的細胞傷害活性によるものであった. 6.Lbpタンパクをコードするlbp遺伝子は先に同定したfba遺伝子の直下流に位置し,Mgaレギュレーターの支配を受けない.Lbpタンパクはラミニン結合活性をもち,細胞付着に関与していることが示された.
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