研究概要 |
分泌型IgAに代表される多量体型免疫グロブリンの構成成分であるJ鎖は免疫グロブリン分子のポリメリゼ-ションと分泌に重要な役割を演じているポリペプタイドである。また,系統発生学的にも異なる動物種間で多くのアミノ酸配列が保存されている蛋白でもある。J鎖には8個のシステイン残基が存在しておりそのうち2個が免疫グロブリン分子(IgAとIgM)に結合することが明らかにされている。しかしJ鎖と免疫グロブリンの分子間の相互作用については全く不明である。本年度の研究計画は,現在進行中であり,ヒトおよびニワトリJ鎖に対するIgAおよびIgMの相互作用,反応速度,結合力あるいは解離度をBIAcore3000にて測定し,異なる動物種間で比較検討することである。J鎖はその精製過程で使用される変性剤により本来の構造が失われる可能性がある。そこで,当教室所有のヒトとニワトリJ鎖cDNAをベクタ-pET32aに組み込んで大腸菌内で発現させたJ鎖融合蛋白質により計測する。現在,そのためのJ鎖融合蛋白を精製中である。また,ヒトとニワトリJ鎖cDNAの塩基配列からsite-direct mutagenesisによりシステイン残基をスレオニンに置換した変異型J鎖cDNAも現在pET32aにサブクロ-ニングした状態にある。J鎖の融合蛋白の精製ができ次第IgAおよびIgMをセンサ-表面に固定化し,これらの分子間における相互作用についてBIAcore3000により検索する予定である。
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