研究概要 |
ニワトリJoining Chain(J鎖)cDNAを発現ベクターに組み込み融合タンパク質を発現させた結果、約25kDaの位置にヒトJ鎖抗体と反応するタンパク質の存在を認めた。これをセンサーチップに固相化し血清から精製したヒト単量体型IgAとIgMとの反応性を調べた結果、明らかなニワトリJ鎖とヒト免疫グロブリン分子間での反応性は認められなかった。今回、融合タンパク質を使用した理由は、精製過程で高濃度の変性剤を使用しなければ多量体型免疫グロブリン分子から分離精製が困難であり、本来のものと比較して変性剤により抗原性が異なることからであった。しかし、実際にBIAを用いて検索した結果、分離精製したニワトリJ鎖に対しての反応性が弱いながら認められたことより今後、J鎖については精製標品を固相化抗原として動物種間の免疫グロブリン分子との反応性を検討する。また、site-directed mutagenesisによりシステインを欠失させたニワトリJ鎖cDNAについては現在、2種類作成済みであるが融合タンパク質との反応性を効率良くBIAで検討するためHis-Tagをリガンドとして固相化できるセンサーチップを使用してシステインが欠失したJ鎖融合タンパク質との反応性を検討する予定である。 すでに我々はエンハンサー領域を含むと思われる約14kbの遺伝子をクローニングしており、当教室所有のMega Base 1000にて全塩基配列を決定した。その結果、5'上流域4.1kbを含む4つのエクソンより構成されていた。エンハンサー領域を含むと思われる5'上流域については他の哺乳動物のものとは相同性はなくNF-1,IRE,SDRE,LBP-1,ER,CSSといった転写調節因子の結合配列が存在し哺乳動物のJ鎖とは全く異なる発現調節機構を有していると考えられる。今後、ルシフェラーゼアッセイにて転写活性に関与している部位を同定するとともに調節因子結合配列と核内タンパク質の反応性をBIAにて検索する予定である。
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