研究概要 |
ニワトリJoining Chain(J鎖)cDNAを発現ベクターpET32(a)に組み込み融合タンパク質を発現させた結果、約25kDaのヒトJ鎖抗体と反応するタンパク質の存在を認めた。これをセンサーチップに固相化しBIA CORE3000にてニワトリIgA(α鎖)とIgM(μ鎖)に対する融合蛋白との反応性を調べた結果、高い親和定数及び解離定数が得られた。しかし、ヒトα鎖とμ鎖に対する反応性は弱かった。J鎖は系統発生学的に保存された特殊な蛋白質の一つであり、抗ヒトJ鎖抗体と異なる動物種のJ鎖との間に交叉反応が報告されている。この反応性をニワトリJ鎖に対して検討した結果、有意な反応性は認められなかった。つまり、BIA core 3000を使用した定量的な検索から、ニワトリに対する、抗ヒトJ鎖抗体の反応性は弱いものであると考えられる。また、ヒトやマウスでJ鎖と免疫グロブリンとの結合に必要とされているC末端システインをセリンに置換し融合蛋白を作製しニワトリα鎖およびμ鎖との反応性を調べた結果、有意な相互作用の減少は認められなかった。つまり、ニワトリの多量体型免疫グロブリンは、ヒトやマウスと異なる構造を有していると考えられる。 ニワトリGenomic DNAライブラリーより約14kbのJ鎖遺伝子をクローニングし、その全塩基配列を決定した。その結果、ニワトリJ鎖は、ヒトおよびマウスと高い相同性を示す4つのエクソンより構成されていた。しかし、5'上流の3.8kbの塩基配列についての相同性は、ほとんど認められなかった。ニワトリJ鎖エクソン1を含む5'上流域4.8kbを含む様々な大きさのDNA断片をベクターpGL-3にサブクローニングした後、ルシフェラーゼアッセイにてプロモター活性を測定した。その結果、5'上流域を含むすべてのクローンに強い活性が認められた。さらにルシフェラーゼアッセイにてエンハンサー領域と思われる500bpを同定し、Data Baseを利用した解析によりNF-E2,USF-1,MyoD, CdxA and GATA3などの転写因子結合配列を同定した。このようなことよりニワトリJ鎖は、哺乳動物のものとは全く異なる発現調節機構を有していると考えられる。
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