研究概要 |
培養ヒト骨髄細胞を用いた骨形成技術の開発のための前段階としてまず採取量に制限を受けないラット骨髄細胞による骨形成技術の検討を行った。われわれはまずin vitroにおいて培養細胞が骨形成能を有することを培養フラスコ上における石灰化結節形成およびアルカリフォスファターゼ染色により確認したその後,リン酸カルシウム系材料であり生体内吸収性である高純度なβ-TCPを主成分とする多孔性のマトリックスを開発し,これを担体として培養骨髄細胞を複合した。この細胞β-TCP複合体を既存の骨形成因子の存在しない背部皮下という異所性に移植し,その骨形成能を検討した。その結果,多孔性β-TCPブロックは組織再生の足場としての機能を十分に発揮し,組織学的および生化学的に良好な骨が形成されることが確認された。吸収性の材料を担体に用いたとき,問題となるのは担体が吸収性される前に組織再生の足場としての作用を発揮し得るかどうかという問題があるが,今回の結果では,ラット背部皮下への移植後4週に比較して8週において骨形成量のマーカーであるオステオカルシン含有量が増加した。このことは,担体の吸収性にもかかわらず,4週に比較して8週で骨形成量が増加したことを意味しており,β-TCPが組織再生の足場として有効に機能したことを示唆している。 今後,本科研費により購入した極微少焦点X線CT装置を用い,より正確な骨形成体積量等の定量的評価を行っていく予定である。
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