研究課題/領域番号 |
11307049
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科系歯学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池本 清海 九州大学, 歯学研究院, 教授 (90091272)
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研究分担者 |
怡土 信一 九州大学, 歯学研究院, 助手 (00315095)
吉田 篤哉 九州大学, 歯学部付属病院, 講師 (00284521)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2002
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キーワード | 麻酔薬 / 中枢神経細胞 / 神経伝達 / カルシウムイオン濃度 / mIPSC / ヒスタミン / 肥満細胞 / メチルパラベン |
研究概要 |
多くの全身麻酔薬はGABA-A受容体の反応を促進して、抑制性伝達を増強する。GABA-A受容体は5個のサブユニットから構成されている。我々はヒトGABA-A受容体サブユニットのDNAをバキュロウイルスを用いてSf9細胞に入れ、ヒトリコンビナントGABA-A受容体を発現させた。受容体のサブユニット構成を変えて、揮発性全身麻酔薬イソフルランの作用の相違を検討した。GABAおよび薬物はY-チューブ法で急速に投与し、膜電位固定下に脱感作発生前のピーク電流を計測した。αβγサブユニットで5量体を形成した受容体では、イソフルランは濃度依存性にGABA反応を増大した。しかし、γサブユニットを欠く受容体ではイソフルランはGABA反応を抑制した。従来、全身麻酔薬の作用は非特異的であるといわれてきたが、蛋白質に特異的に作用することが示唆された。 ラット脳のスライスを作り、細胞を機械的に単離すると、シナプス前終末が付着した神経細胞が得られる。細胞体を膜電位固定すると、mIPSCが記録できる。ブロッカーの併用により、グリシンによるmIPSCを同定できる。イソフルランは、このmIPSCの振幅を変えることなく、発生頻度を増大した。このことから、イソフルランが静止時のシナプス前終末のカルシウムイオン濃度を増加させることが示唆された。 ATP受容体はP2XとP2Yに分けられるが、P2X受容体は陽イオンチャネルと複合しており、痛みに関する神経伝達に関与している。ラット後根神経節細胞を単離し、そのATP反応に対する静脈麻酔薬(ペントバルビタール、プロポフォール、ケタミン)の効果を検討した。P2X2およびP2X3受容体による反応が得られ、ペントバルビタールがP2X3受容体反応を抑制した。全身麻酔作用および痛みに対する作用に、P2X3受容体の抑制が関与していることが示唆された。 臨床使用の局所麻酔薬には防腐剤として、メチルパラベンが含まれている。この化合物がハプテンとして働き、免疫反応を介して肥満細胞からヒスタミンを遊離する可能性の外に、肥満細胞に直接作用してヒスタミンを遊離する可能性がある。カルシウム測光により、メチルパラベンが肥満細胞内のカルシウム濃度を上昇させることが明らかになった。何らかの原因で、同時にPKA活性が上昇しているとヒスタミンが遊離される。血中の高濃度ヒスタミンが、アナフィラキシー様反応などの生体反応を引き起こすものと考えられる。臨床におけるメチルパラベンの副作用の可能性が明らかになった。
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