研究課題
基盤研究(A)
所内の抗マラリア剤スクリーニングセンターで実施されたin vitroスクリーニングの結果、選択毒性の高い抗マラリア活性を有する天然物素材として放線菌2株、糸状菌2株及び一植物抽出物を活性物質取得候補とした。微生物素材については、これらの生産菌を活性物質生産培地にて培養を行い、得られた培養液より抗マラリア活性を指標に活性物質の精製、単離後、物理化学的測定、構造決定を行っている。これらの中で一放線菌K99-0413株の生産する抗マラリア活性物質はポリエーテル系抗生物質X-206であると同定されたが、優れた抗マラリア活性と高い選択毒性を示すことは新規な知見である。他の株については現在検討中である。植物のアジサイの葉抽出物については、従来より抗マラリア活性が報告されていた。最近、同じユキノシタ科の薬用植物常山より抗マラリア活性物資trans-febrifugineが単離されたことから、アジサイと常山の各種抽出液についてHPLC-MSにて比較解析した結果、アジサイの抗マラリア活性物質はtrans-febrifugineであると同定した。また、以前から独自に行っていた微生物由来のエンドパーオキシド様物質のスクリーニングにおいて、新たに一放線菌K99-5147株の生産物が単離され、アンスラサイクリン系抗生物質urdamycin Fと同定された。これについても抗マラリア活性を示すという新知見が得られた。なお、抗生物質X-206はWHOの研究協力機関にてin vivoの感染治療実験が実施され、ある程度の効果を認めており、詳細について現在検討中である。