RecQファミリーヘリカーゼを中心にした癌化、老化の基礎研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11307055
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 榎本 武美 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (80107383)
• 研究分担者: 益子 高 近畿大学, 薬学部, 教授 (30157200)
• キーワード: RecQファミリー / ヘリカーゼ / RecQL1 / ワーナー症候群 / 酵母Sgs1 / Whip / 老化 / 癌化

研究概要

本研究は、RecQファミリーヘリカーゼの機能を解析することにより、その機能の欠損により生じる染色体の不安定化を分子レベルで明らかにすることにより、発癌、老化機構の解明をめざした。
1.ニワトリDT40細胞を用いて、RECQL1、RECQL5遺伝子それぞれ単独の破壊株を作製した。これらの遺伝子破壊株は野生型の細胞と同様に増殖したことから、RECQL1、RECQL5とも増殖には必須ではないことが明らかになった。また、BLM(RECQL2)遺伝子破壊株とは異なり、これらの遺伝子破壊株では姉妹染色分体交換の頻度の上昇や、targeted integrationの頻度の上昇は観察されなかった。
2.RECQL1及びRECQL5遺伝子とBLM遺伝子との二重破壊株を作製した。これらの二重破壊株の増殖はBLM遺伝子単独破壊株の増殖より若干遅くなったことから、BLMの機能が欠損した状態ではRecQL1やRecQL5は細胞増殖において重要な役割を果たすことがわかった。
3.酵母のtwo-hybrid系を用いて、WRN(RecQL3)と相互作用するタンパク質を検索し、新規なタンパク質(Werner helicase interacting protein)を同定した。WHIP遺伝子は酵母にも存在することから、yWHIP遺伝子の破壊株を作製した。破壊株はワーナー症候群細胞と同様に分裂寿命が短縮した。一方、WRNの相同遺伝子であるSGS1を破壊すると分裂寿命が短縮することが知られていたが、WHIPとSGS1の両者を破壊すると分裂寿命が更に短縮した。一方、yWHIP遺伝子を破壊することにより、SGS1遺伝子破壊株のMMS感受性が軽減することが明らかになり、yWhiPとSgs1が機能的にも関係していることが明らかになった。
4.酵母の遺伝学的解析から、WhipはDNAポリメラーゼδと機能的な関連があることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Yoh-ichi Kawabe: "Covalent modification of the Werner's syndrome gene product with the ubiquitin-related protein, SUMO-1."Journal of Biological. Chemistry. 275. 20963-20966 (2000)
• [文献書誌] Wensheng Wang: "Possible association of BLM in decreasing DNA double strand breaks during DNA replication."EMBO Journal. 19. 3428-3435 (2000)
• [文献書誌] Atsuko Miyajima: "Sgs1 helicase activity is required for mitotic but apparently not for meiotic functions."Molecular and Cellular Biology. 20. 6399-6409 (2000)
• [文献書誌] Tamae Kawabe: "Differential regulation of human RecQ family helicases in cell transformation and cell cycle."Oncogene. 19. 4764-4772 (2000)
• [文献書誌] Fumitoshi Onoda: "Involvement of SGS1 in DNA Damage-Induced Heteroallelic Recombination that Requires RAD52."Molecular General Genetics. 264. 702-708 (2001)
• [文献書誌] Takemi Enomoto: "Functions of RecQ family helicases : possible involvement of Bloom's and Werner's syndrome gene products in guarding genome integrity during DNA replication."Journal of Biochemistry. (in press).