本研究では、RecQファミリーヘリカーゼの機能の欠損により生じる染色体の不安定化の機構を分子レベルで明らかにすることにより、発癌、老化機構の解明をめざした。解析にあたっては、ヒト培養細胞だけでなく、遺伝学的解析の容易な出芽酵母やニワトリDT40を用い、以下の成果を得た。 1.DT40細胞を用いてブルーム症候群原因遺伝子破壊株を作製し、ブルーム症候群で亢進しているSCEは相同組換えによること、また、BLMはDNA複製時に生じる二本鎖DNAの切断を抑制していることが明らかになった。 2.Werner症候群原因遺伝子産物、WRNがUbc9SUMO-1と相互作用し、実際にSUMO-1化される。 3.WRNと相互作用する新規なタンパク質WHIP(Werner helicase interacting Protein)を発見し、両者は核内に存在し、その局在が一致することを明らかにした。さらに精製タンパク質を使って結合を調べ、精製したタンパク質同士でも結合すること、両者の結合にはATPが必要であり、両者の結合がダイナミックに制御されていることが明らかになった。 4.WHIPは酵母にも存在することから、酵母を用いてWHIPが機能する過程を解析した。WHIPがRFCと相同性をもつことから、DNA polymerase δ、RFC、PCNAの変異株にWHIPを過剰発現させたところ、これら全ての変異株が致死となり、DNA polymerase δ、RFC、PCNAとWHIPとの機能的関連が明らかになった。また、two-hybrid systemでWHIPとDNA polymerase δとの結合を確認した。 5.酵母のRecQであるSgs1とDNA複製に関与するMre11、Sld3、Sld5との機能的関連を遺伝学的解析により明らかにした。
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