研究課題
我が国が近代国家への変身を目指した改革の中で、美術も大きな変化を遂げた。新たな造形として、仏教美術に加えて彫刻(彫塑)が齋された。新たな素材に加え、在来の技法、材料を用い、新たな造形意識に目覚めた作家たちが作り上げた貴重な作品も、100年を過ぎ痛みを生じ崩壊の危険な状態に瀕している作品もある。本学大学美術館蔵竹内久一作技芸天像を対象に、構造、制作技法を調査を行った。非破壊非接触調査で、次第に制作技法も明白になって来た。意外な点は、江戸時代の制作技法を踏襲せづ、むしろ古い時代に範を取るなど、古い優れた技法を探り、それを理想として発展させた点に興味をそそられる。明治期に作られた作品群も、これから初めての修復を受ける時期に来ている。今後修復に当たる我々に課せられた責任は極めて重い。従来の手法で安易に手を付けるべきではない。現代の修復者が全責任を持って、修復理念を明確に策定したうえで修復にかかるべきである。今年度実施作業昨年実施したX線撮影の撮り漏れ箇所の補充、不鮮明な箇所の撮り直し。像表面のクリーニングのための実験開始。水溶性樹脂の使用が不可能故、溶剤タイプ樹脂を用いてのクリーニング法を採用することになった。剥落止めに用いる樹脂もエマルジョンタイプでの作業は危険であり、溶剤タイプ樹脂を用いる事とし、テストを重ねた。表面彩色層の調査に、非接触調査手法の実験として、携帯型蛍光X線装置を用いる撮影を行った。改めてこの機種を用いる調査方式の有用性を確認した。今後の課題従来行われて来た調査方法に加え、クロスセクション標本を作り、彩色層断面、表面の様子を詳細に観察するなど目視調査の徹底。新たな修復理念の構築
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