明治期木彫像の技法調査および保存方法の研究 竹内久一作「技芸天像」を主とした

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11308004
• 研究機関: 東京芸術大学
• 研究代表者: 長澤 市郎 東京芸術大学, 美術研究科・文化財保存学, 教授 (40172522)
• 研究分担者: 佐藤 道信 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (30154074) ; 小野寺 久幸 財)美術院 東京芸術大学, 美術研究科・文化財保存学, 常任理事 客員教授 ; 三浦 定俊 東京文化財研究所, 保存科学部 東京芸術大学・美術研究科・文化財保存学, 部長 教授 (50099925) ; 真貝 哲夫 東京農工大学, 付属繊維博物館, 助手 (90282813) ; 稲葉 政満 東京芸術大学, 美術研究科・文化財保存学, 助教授 (50135183)
• キーワード: 明治期彫刻 / 木彫 / 修復技術 / 彩色彫刻 / イメージングプレート / 非破壊構造調査 / 制作技法 / 3Dレーザースキャニング

研究概要

科研13年度作業
剥落止め、接着強化実験で、アクリルエマルジョンに加え、天然高分子物質メチルセルロースでの実験を開始した。地球環境の悪化は文化財修復材料も例外では無く、天然素材使用が最近の傾向である。しかし実験の結果は強度の点で満足できなかったが、光沢を生じない点は良い。
森川杜園作「鹿」の顔料非破壊調査を蛍光X線で行った。下地は胡粉で、その上に薄く彩色している、水銀、鉄、ヒ素など、明治初期に使用された顔料のデータが得られた。
技芸天、神武天皇像X線画像の分析作業を継続しようやく完成を見た、フイルムとI.Pの画像を組み合わせ画質の明瞭度を高めることが出来た。これを基に将来の本格修理に備え体内に打たれている金具位置図を作成した、これにより制作時の変更が明らかになった。
高村光雲の特殊講議資料、木彫木寄せ図を元に、桧材を用いて模型制作を行い、多くの知見を得た。
3Dレーザースキャニングの実験を、技芸天が修理中のため奈良新薬師寺十二神将像の内2体で行い高結果を得た。現在、立体を立体として記録する手段が無い。小さい資料はCTスキャンが有効であるが大きい作品には使えない、最近開発されたレーザー光3Dスキャニングで実験した。class2の光線は資料に対し危険もなく、高精度の記録(断面を重ね形を造る、任意の箇所の形体を見ることが可能)で立体を記録出来る。文化財調査、修復に有用な器機である。
3年間の実績を基に報告書を作成した。
以上をもって平成11年度より行ってきた全作業を完了した。

研究成果

• [文献書誌] I.Nagasawa, T.Shida, H.Oshima, M.Koyano, F.Preusser: "Polychromed Wooden Buddhist Sculptures in Japan-Histoly, Materials and Techniques"12th ICOM-CC cogress paper. 1. 434-437 (1999)
• [文献書誌] 信太司, 長澤市郎, 稲葉政満, 山崎隆之, 水野敬三郎: "科学研究費補助金研究成果報告書 基盤研究(C)(2) 平成9年度〜平成11年度"天平塑像の心木構造の研究 -新薬師寺十二神将-. 1. 8-16,24-58 (2000)
• [文献書誌] Ichiro NAGASAWA, W.T.CHASE, Tsukasa SHIDA, Naoki FUJITA, Masako KOYANO: "Conservation of Japanese Polychrome Buddhist Sculpture"Summaries of the Posters IIC Melbourne Congress. 22-22 (2000)
• [文献書誌] 早川泰弘, 二浦定俊, 津田徹英: "ポータブル蛍光X線分析法による木彫像の彩色材料調査"保存科学. 第40号. 75-83 (2000)
• [文献書誌] 渡辺明義: "Scientific Study on Historical Polychrome Objects 彩色文化財の材料と技法に関する科学的研究"課題番号11694014 平成11・12年度文部省科学研究費補助金基盤研究(A)(2)年次成果報告書. 1. (2001)
• [文献書誌] 田淵俊夫, 宮廻正明, 三浦定俊 東京芸術大学美術研究科日本画研究室: "よみがえる日本画"伝統と継承1000年の知恵 東京芸術大学大学美術館. 1. 151 (2001)
• [文献書誌] 佐藤道信: "明治国家と近代美術 -美の政治学"吉川弘文館. 344 (1999)