研究課題/領域番号 |
11308005
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
森田 恒之 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 教授 (10133612)
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研究分担者 |
大谷 肇 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50176921)
園田 直子 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 助教授 (50236155)
岡山 隆之 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70134799)
吉田 集而 地域研究企画交流センター, 教授 (90099953)
関 正純 高知県立紙産業技術センター, 主任研究員
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キーワード | 酸性紙 / 紙の劣化対策 / 官能試験 / pH値 / 劣化紙の強化 / 英国議会資料 |
研究概要 |
酸性紙の名が示すように紙の劣化程度はそのpH値で示すことが多い。試料を採取し水中に酸性成分を抽出して測定すればほぼ適正値が得られるが、図書や博物館資料では一般に資料の採取が困難である。そこで手触り、目視による官能試験で劣化度を判定に利用することが多い。文系出身者が多い施設ではこの方が一般的である。本研究班ではまずpH値、色差、紙繊維の分子構造変化(FTIR使用)等の計測結果と、官能検査の相関を知ることを目的に、非専門家(文系のアルバイト学生)と研究班員をそれぞれ2群に分けて、約百冊の洋紙図書資料について官能検査を行った。検査に先立ち試験項目(調査用紙)の設定に十分時間をかけた。統計手法による分析の結果は、pH値と目視・触視による判定の間の相関が希薄なことが明らかになった。経験的に予測されていることが実証できた。色差と構造変化については官能検査一部の項目が有効であるが、詳細は目下検討中である。官能検査に当たった専門家と非専門家の各群間では、顕著な判定差異がなく、むしろ個人差が大きい。試験項目が適切で試験方法について短期の訓練を経れば非専門家でも対応できることが検証できた。試験にはおもに国立民族学博物館が所有する英国議会資料を使用した。 上記の検証と並行して、劣化紙対策の問題点を洗い出した。中性化処理法の開発は進んでいるが、公害、安全性、耐久性の点で既存の諸方法は問題を残している。最大の問題は劣化紙の強化策が未解決である。対策としては、目下フランスのドキュメンテーション・センターを中心となって検討を進めている、臨界状態の液化炭酸ガスを溶媒とする強化法がもっとも有力と考えている。しかし、その開発は大幅に遅れているので、動向を見すえながら次の段階を検討する予定である。今年度においては中和剤および強化剤についての候補を考え、次年度以降の実験計画を策定した。
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