1.縦励起ニッケル様モリブデン軟X線レーザー用ターゲットの最適設計 (1)光線追跡コードを開発し、1次元流体シミュレーションコードの結果と組み合わせることにより、縦励起軟X線レーザーターゲットの最適設計を行った。 (2)一般的なスラブ型ターゲットの場合、縦励起光はプレプラズマ中を100μm程度しか伝播できないことを明らかにした。 (3)2つの薄膜ターゲットを100μm間隔で設置したdual membrane ターゲットを提案した。しかしこの場合、それぞれの薄膜から精製したプラズマの衝突により電子密度分布に凸凹が生じ、縦励起レーザー光が複数のbeamletに分割してしまうことを明らかにした。 (4)以上の計算から、導波路上の電子密度勾配を生成するターゲットが不可欠であることが判明した。本研究では口径500μmのcapillaryターゲットが有効であることを示し、軟X線レーザー増幅実験への使用に最適と判断した。 2.スラブ型ターゲットに作られたプレプラズマ中のピコ秒縦励起レーザー光伝播(予備実験) (1)スラブ型モリブデンターゲットプラズマによる縦励起レーザー光の吸収率を測定したところ、プレプラズマがなくても70%を超える大きな吸収率が観測された。これはレーザーパルスの先頭部分によりプレプラズマが生成されたためと考える。 (2)透過縦励起レーザー光の横モードをCCDカメラにより観測した結果、プレプラズマによる縦励起光の湾曲が観測された。またこの結果をシミュレーションで再現したところ、実験結果との良好な一致が確認された。 (3)可視波長域における縦励起プラズマからの発光をCCDカメラで観測した。その結果、数ミリメートルの長さのジェット上発光が観測された。このような長いジェットの報告はこれまでに無く、縦励起という特異な実験配置に起因する新たな現象が観測されたと考える。この現象の発生メカニズムはまだ解明されていないが、それだけに関連する物理が非常に興味深い。
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