研究概要 |
ピコ秒熱反射法による熱拡散率測定では,ピコ秒以下のレーザーパルス(加熱光)を試料に照射し,その後の試料表面温度の時間変化を別のレーザーパルス(測温光)の反射強度の変化としてとらえる。装置は,パルスレーザー本体,加熱光照射光学系,測温光照射光学系,測温光反射強度測定系,およびデータ処理部に大別される。本年度は,レーザー本体及び光学系を中心に装置の整備・製作を行った。また,試料の光学定数について検討した。 (a)加熱・測温用パルスレーザーの整備 加熱・測温用パルスレーザー(フェムト秒チタン・サファイアレーザー)を購入し,レーザー発振実験を行った。その結果,波長780nmにおいて最大800mW以上の出力が安定して得られることを確認した。 (b)光学系の設計・製作 汎用の光学部品を組み合わせて,加熱光照射光学系および測温光照射光学系を製作した。これらは,加熱光と測温光の振り分け,加熱光と測温光の強度調節および収束,測温光の遅延時間-加熱光が試料に到達してから測温光が到達するまでの時間-の調整等の機能を持つ。 (c)光学定数の測定 試料表面温度の時間変化から熱拡散率を求める際には,試料の光学定数(屈折率および消衰係数)が必要となる。これらを測定するためのエリプソメーターを購入し,シリコン単結晶,アルミニウム箔等について実際に測定を試みた。その結果,特にシリコン単結晶では,表面状態が消衰係数に大きな影響を与えることがわかった。熱拡散率を測定する際には,厚い酸化膜等を取り除くような前処理をした上で,表面状態を測定の間安定に保つ工夫が必要であると思われる。
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