研究分担者 |
松本 良 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40011762)
角皆 潤 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50313367)
岡田 尚武 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111334)
石橋 純一郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (20212920)
吉田 尚弘 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (60174942)
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研究概要 |
本年度の観測は日本近海の海底熱水系および冷湧水系にターゲットを絞り, 海底直上水と堆積物間隙水中に含まれるメタンガスの濃度と炭素同位体比を測定した. 海底熱水系は, 沖縄トラフ南西部(鳩間海丘および与那国海丘)における温度200℃以上の熱水試料および気体試料を分析した. 両海域とも有機物の熱分解起源のメタンを検出したが, 同位体比が-30‰および-45‰と大きく異なることから, 両熱水系で熱水循環プロセスに違い(微生物による二次的なメタンの酸化分解など)のあることを指摘した. 伊豆小笠原水曜海山においては保圧式熱水採水器で初めて高品質の熱水を採取し, 同位体比-6‰のマグマ起源メタンガスを検出した. また昨年度採取したインド洋アデン湾の熱水プルーム試料の分析も並行して行い, 熱水プルームの拡散にともないメタンガスの酸化過程が進行する様子を炭素同位体比から明らかにした. 一方,冷湧水系については, 日本海東縁のプレート境界域で初めて地球化学的研究のための潜航調査(「しんかい6500」による)を実施し, メタン濃度と炭素同位体比の関係を調べた. 日本海東縁冷湧水のメタン濃度は南海トラフ付加体の冷湧水に匹敵する高濃度で, 軽い同位体比(-75〜-84‰)から微生物起源であることを示した. また海底堆積物中で微生物によるメタンの酸化過程が進行し, その際同位体分別係数1.004で炭素同位体比が重くなることを見いだした. 間隙水の化学的性質(塩化物イオン濃度, 水の酸素同位体比など)からみて, 日本海東縁のメタンはメタンハイドレート由来である可能性を指摘した. その他, 南海トラフ付加体の冷湧水についても, 熊野海盆の泥火山帯で集中的な観測を行い, 時系列式冷湧水採取装置による試料採取と分析を実施した.
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