研究概要 |
本研究では動物ミトコンドリアの特異な翻訳システムの個々の装置の機能特性と構造上の異常性に焦点を当て、それらの機能構造の詳細な解析と実行可能なものからその立体構造を解明し、機能発現に必要な構造を探ることにより、現存する生物のなかでRNAから見て最も単純と思われるミトコンドリア翻訳システムの構築原理を解明することを目的とする。本年度の成果は以下の通りである。1.異常構造を持つtRNA^<Ser>GCUとEF-Tu複合体のX線結晶解析--現在高度好熱菌Thermus thermophilus EF-Tuの大腸菌内の大量発現系により、数十mgオーダーでEF-Tuを取得し、ゲルretardation法を用いて種々のミトコンドリアtRNAとの複合体形成の条件検討を行っており、有望なものから結晶作製に入っている。2.ミトコンドリアのトランスホルミラーゼ(MTF)のX線結晶解析--フランスEcole PolytechniqueのBlanquet博士との共同研究により、当研究室の元大学院生がポスドクとして滞在し、大量調整した酵素の結晶化とそのX線結晶解析を試行中である。3.ウシミトコンドリア・リボソームの機能構造解析--牛ミトコンドリアの55Sリボソームから2次元ゲル電気泳動により約40個の蛋白質を分離し、液体クロマトグラフ/質量分析法(LC/MS)によって解析し、大腸菌のタンパク質とホモロジーを比較して多くのタンパク質の同定に成功した。その結果タンパク質結合部位が保存されているRNAに対応するリボソームタンパク質(L2など)の大きさは大腸菌とミトコンドリアでほぼ変わらないのに対し、タンパク質との結合部位が短縮、あるいは欠落しているRNAに対応するタンパク質(L1,L3,L9,L27など)は大きくなっているという傾向を確認した。4.SerRS---ウシ・ミトコンドリウ・セリルtRNA合成酵素(SerRS)の大量発現系の構築に成功し、現在その単結晶の作製、及び異常構造を持つ2種類のミトコンドリアtRNA^<Ser>との複合体形成の条件検討を行っている。
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