研究概要 |
神経細胞特異的な新規チロシンキナーゼを探索するために、チロシンキナーゼのコンセンサス配列を元に4セットのオリゴヌクレオチドプライマーのペアーを作成した。今年度は、これを用いて7周令マウスの全脳細胞mRNAから作成したライブラリーcDNAsを鋳型としてPCRを行い、その産物の塩基配列を解析した。その結果、PCR増幅されたcDNAsの多くはFyn,Lyn等既知のチロシンキナーゼをコードするものであり、またMARK等の既知のセリン/トレオニンキナーゼをコードしているものであった。新規には、MAPキナーゼに類似する蛋白質をコードしている遺伝子が同定された。 さらに、種々の組織でubiquitousに発現している既知のチロシンキナーゼcDNAsを、クローニング過程で除き、脳特異的チロシンキナーゼ遺伝子をより効率的に探索するために、SSH(Suppression Subtractive Hybridization)法を採用したcDNAライブラリースクリーニングを計画し、pilot実験を進めている。 一方、脳で高い発現を示すSrcファミリーキナーゼやErbB2チロシンキナーゼの下流シグナル伝達系を解析するために、Lyn,Fyn,ErbB2蛋白質をバキュロウイルスを用いた系で大量発現させた。これらを用い、脳mRNA由来発現cDNAライブラリーの蛋白質フィルターを、フィルターキナーゼassayによりスクリーニングした。その結果100余りの標的候補蛋白質をコードするcDNAsをクローニングするに至り、現在それらの塩基配列解析を進めている。予備的には極めて神経細胞特異的に発現する遺伝子も見い出されている。
|