研究概要 |
神経特異的に発現する新規チロシンキナーゼを、RT-PCR法を併用したdifferential screeningやinsilico screening で探索した。その結果データベースには登録されているものの解析がまだ殆ど成されていないチロシンキナーゼ候補が見出された。この蛋白質は神経細胞死制御に関わると示唆されているチロシンキナーゼAATYK1と弱い類似性が見られた。我々はこれをBREK (Brain enriched kinase, Byk改め)と命名した。その後ホモロジー検索によりBREK2を同定した。BREK, BREK2発現プラズミドを作成した解析から、これらキナーゼは強いセリン・トレオニン活性をもちかつ弱いながらもチロシンキナーゼ活性をもつdual specificity kinaseであることが分かった。大脳皮質、嗅球で発現し生直後2週間程度はよくリン酸化されていることが分かった。またNGF刺激やホルボールエステル刺激でリン酸化されることを明らかにし、神経突起進展に関わると推定した。 脳で発現するLyn, ALKチロシンキナーゼの標的蛋白質を、固相リン酸化法、酵母two-hybrid法により探索し、それぞれBANK等とSNT2を見いだした。BANKはLynとIP3Rを直結させる新規アダプター分子で、BANK/Lyn/IP3R複合体形成がLynによるIP3Rのチロシンリン酸化を誘導し、その結果チャネル活性が上昇することを見いだした。また、細胞癌化シグナルのアッセイ系を使い、ALKチロシンキナーゼがアダプター分子SNT2を用いて下流にシグナルを送っていることを示した。更にALKのリガンドを,模倣するモノクローナル抗体を作成した。またグルタミン酸受容体に会合する分子を見いだした。そのうちのひとつはPTPMEGチロシンホスファターゼであり、視床や海馬で発現し、グルダミン酸受容体のリン酸化状態に影響を与えることから、神経可塑性に関わることが示唆された。
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