研究課題
基盤研究(A)
体細胞クローン技術の実験動物学分野への応用を検討するために、連続核移植法によってマウス繊維が細胞、ES細胞の核をドナー細胞としたクローンマウスの作製を行い、それらクローンマウスの特性を検討した。分裂中期(M)に同調させたCD1 or (CD1xB6)F1繊維芽細胞核から5匹の、G9aまたは卵管特異的糖蛋白OGPを不活化した2種類のTT2株ES細胞核から27、20匹のクローンマウスを作製できた。これらクローンマウスでの共通した異常として胎盤の過形成(正常の2〜5倍の増量)が認められ、またOGP ES細胞由来クローンマウスでは過体重、出生時開眼などの異常が認められた。しかし、これら異常はクローンマウスを交配によって得た産仔では認められなかった。これらのことから、クローンマウスでの異常はDNAの変異によるよりも後世的なインプリント遺伝子などの発現異常が原因と考えられた。実際に、クローンマウスやそれら胎盤においてIgF2やH19などのインプリント遺伝子の発現パターンが正常のものと異なるパターンを示すことを、microarray法やreal time PCRを用いて明らかにした。また、得られたクローンマウスを長期飼育したところ、我々が作製したクローンマウスは他報告にあるような短命ではなかったけれども、対照マウスと比較して、腎臓、肝臓や精巣などに異常が認められた。しかし、クローンマウスの異常が子孫に伝わらないことなどから、遺伝子改変マウスの作製などに有効であることが考えられた。また、ドナー核のミトコンドリアの混入によって、クローンマウスの表現系に影響を与える可能性が示唆された。
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