研究概要 |
本研究では錯体合成反応を鍵として、高次構造の新しい機能物質系を創り出すことを主題とする。本年度はπ共役鎖とレドックス錯体を融合したπ共役多核錯体、レドックス錯体を金属-金属結合で連結したクラスター錯体、および金属超微粒子の表面をレドックス分子で化学修飾した分子修飾金属超微粒子の三系について研究を進めた。 π共役多核錯体として、オリゴフェロセニレン、アゾ架橋フェロセンオリゴマーおよびポリマー、アゾベンゼン架橋ポリピリジン多核錯体を合成し、金属核間電子相互作用について電気化学的および光学的に解析した。特に、オリゴフェロセニレンについては、混合原子価状態における電子スペクトルを隣接核間相互作用モデルで解析できることを示した。アゾ架橋錯体については、光異性化反応と構造、物性との関係について調べ、例えば、アゾフェロセンは極性溶媒中でトランス体からシス体へ光異性化し、レドックス電位が大きく負側へシフトする子とを見出した。ポリピリジン錯体については、Rh(III)錯体で光異性化しやすいが、Ru(II)、Co(III)錯体では異性化がおこりにくいことを示した。しクラスター錯体としては、コバルタジチオレン錯体と6族および8族金属の0価カルボニル錯体との反応により、MoCoMo、WCoW,FeCo,RuCoの金属間結合を持つ新規化合物を合成、単理し、前三者についてはX線構造解析を行なった。またレドックス特性を調べ、可逆的な還元を行う前三者については、還元体の電子構造をUV-VIS-NIR吸収スペクトルやESRスペクトルにより明らかにした。レドックス分子修飾金クラスターについては、ビフェロセン、テルフェロセン、アントラキノンを末端に有するアルカンチオールを修飾した金クラスターのレドックス界面凝集現象を見出し、さらにクラスター薄膜の物性電位制御ができることを明らかにした。
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