研究概要 |
1 強い抗発ガンプロモーター活性、抗菌、抗黴活性を有する南半球アルゼンチン産ゼニゴケ科ツボゼニゴケおよびケゼニゴケ、エクアドル産クサリゴケ科苔類Leptoscyphus jackiiおよびMarchesinia brachiata、の成分研究を行い、数種の新規化合物を単離し、報告した。 2 ニュージーランド国内の数箇所で採集したスジゴケは現在までにケモタイプは3種存在する事が明らかとなった。ケビラゴケ(Radula)属苔類はプレニルビベンジル類を指標化合物として化学系統分類を試みた結果、大きく四つのケモタキサに分類された。これらケモタキサは形態分類学的に亜属として分類されるべき種であると考えられる。Radula marginataのエーテル抽出物には大麻の幻覚成分であるcannabinoid類の類似化合物2種を単離した。これらの化合物は苔類由来の有望な医薬品、あるいは創薬リード化合物に発展する可能性を持つ化合物である。 3 苔類には高等植物に含まれない固有の成分がある。なかでもビスビベンジル類はそれを代表する化合物であるが本研究でシダにもビスビベンジル類ペロテチンHが含まれることが明らかになった。また辛味を呈する苔類であるHymenophyton flabellatumの成分分析を行った結果、1-(2,4,6-trimethoxy-phenyl)-but-2-en-1-oneが本種の辛味起因物質である事を突き止めたが、リョウメンシダから既に単離されており、シダ類と苔類に共通して含まれていて、高等植物からは単離されていない事が判明した。一方、シダ植物Blechnum fluviatileは強烈な辛味を呈する事が知られている。本種シダ植物のエーテル抽出物から辛味成分として単離した化合物は既に苔類ニスビキカヤゴケから単離されているポリゴジアールであることが判明した。本研究の成果で最も重要な点はビスビベンジル化合物のペロテチンHおよび辛味成分1-(2,4,6-trimethoxy-phenyl)-but-2-en-1-oneがコケとシダに含まれることを明らかにした点である。このような化合物の存在はコケとシダが高等植物とは異なる分化、進化の過程で現在に至っている事を化学成分から覗い知ることができる。この2種の化合物およびポリゴジアールはシダ類およびコケ植物の進化・分化の過程を研究するうえで極めて重要な指標化合物である。
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