研究概要 |
本研究では、ヒト化を特徴づける遺伝子の変化を発見することを目的として、系統的にヒトに近縁な類人猿,特にチンパンジー(chimpanzee)、ゴリラ(gorilla)、オランウータン(orangutan)}の遺伝子の塩基配列の大規模比較を行なった。まず昨年度から進めていた研究だが,すでにDDBJ/EMBL/Genbank国際塩基配列データベースに登録されているヒトの塩基配列からプライマーを設計して、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンからそれらの相同遺伝子の塩基配列決定を行なった。これには各生物種のゲノムDNAを鋳型として,PCRダイレクトシーケンス法を用いた。30遺伝子座、26kbずつ配列を決定し、分子進化学的解析を行った。その結果,これらの領域全体では,ヒトの系統で特異的に蓄積した塩基置換は全配列のうちの0.1%であると推定された。また,HoxAクラスターについて,PCRダイレクトシーケンス法を用いて合計で21kbづつの塩基配列をチンパンジー,ゴリラ,オランウータンで決定し,解析を行った。その結果,前半と後半では進化速度や系統関係について差が見いだされ,HoxAクラスターが全体としてまとまって進化してきているわけではないことが示唆された。ヒトと類人猿の塩基配列比較データベースの作成、およびそれらの大規模比較解析を行なっている。これらの結果は、類人猿ゲノム計画Silveのホームページ(http://sayer.lab.nig.ac.jp/〜silver/index.html)ですでに部分的に公開している。一方類人猿の種内変異の探索も重要なので,チンパンジーについては三和化学熊本霊長類パークと共同研究で血液資料の提供を受け,DNAを抽出して,mtDNAやMHCなどいくつかの遺伝子の塩基配列決定を行っている。
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