研究概要 |
強磁性トンネル接合を再生用磁気ヘッドとしてデバイス化するために,微小トンネル素子作製プロセスの検討およびトンネル素子の最適化を行った.以下に主な検討項目と成果を記す. 1.微小トンネル磁気抵抗素子の作製 電子線リソグラフィーを用いて0.5×0.5mm^2までの微小トンネル接合を作製するプロセスを確立し,加工前の素子特性と比較して損傷無いことを確認した. 2.トンネル磁気抵抗素子の低抵抗化およびヘッド試作 トンネル磁気抵抗素子を再生磁気ヘッドデバイスに応用する場合,接合の抵抗値の低減が大きな課題である.そのため最適積層構造の検討,極薄アルミナ絶縁層の作製方法,条件の最適化を行った. (1)絶縁層用のAl膜厚を0.66〜1.3nmに変化させ,プラズマ酸化時間を最適化させた.最も低抵抗かつ高磁気抵抗比の接合として,抵抗値80Ωμm^2,磁気抵抗比30%を得た. (2)伝導性原子間力顕微鏡を用いた絶縁層の局所伝導特性を測定から,低抵抗化に伴う磁気抵抗比の減少は,絶縁障壁の低い局所的な伝導パスに起因することを示した. (3)さらに素子抵抗を低減するために,酸素ラジカルによる酸化方法を検討した.同手法を用いて作製したAl膜厚0.8nmの接合はプラズマ酸化により作製した接合と比較して,抵抗および磁気抵抗比は同等で,局所的な絶縁障壁高さの分布は0.3eVから0.08eVに減少した. (4)これまでの素子検討結果をもとに再生磁気ヘッドを試作した.0.6nmのCuを通じた長距離交換相互作用を利用してフリー層の安定化を図り,約10Gb/in^2相当の出力を得た.
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