研究概要 |
1.バルクInGaAsP/InPハイメサ導波路構造を用いたマッハツェンダー型光スイッチ回路:フォトニックネットワーク構築に向けて,InP基板上バルクInGaAsP中のフランツケルディッシュ効果に基づくハイメサ導波路構造のマッハツェンダー干渉計型光スイッチ回路を研究した.まず,InGaAsP系材料のメタン・水素サイクリック反応性イオンビームエッチング技術を確立し,リフトオフTiマスクを用いてハイメサ導波路の形成を可能にした.次に実際の素子の設計を行い,前記エッチング技術と電子線露光によって試作した.その結果,3Vという低いスイッチング電圧が,波長1.53μm-1.56μmにおいて偏光無依存に得られた.位相変調領域長とスイッチング電圧の積は1.5V・mmであり,従来に比べ4倍改善された. 2.選択成長と多モード干渉デバイスに基づく集積型全光スイッチ回路の設計と作製:電子回路の速度限界を超えるために,光による制御が可能な「全光スイッチ」が求められている.ここでは,半導体光アンプとマッハツェンダー干渉計を集積化した光スイッチ回路を研究した.まず,能動干渉計の光量のアンバランスを補償する非対称分岐/合流比の多モード干渉(MMI)カプラ,ならびに制御光・被制御光のミキシングと分離を行う特殊なMMIカプラの設計と数値解析を行い,実際に試作して動作確認を行った.次に有機金属気相エビタキシーにおける選択成長を利用して,InP基板上に半導体光アンプとMMIカプラ,入出力導波路を集積化し,光スイッチ回路を試作した.その結果,電気・光スイッチング実験において約1mAという低いスイッチング電流を,また光・光スイッチング実験において約10倍の消光比改善を,それぞれ達成した. 3.能動/受動集積化に向けたInP系アレイ導波路格子合分波器の設計と試作:アレイ導波路格子(AWG)は波長多重(WDM)光通信のキーコンポーネントであるが,半導体光アンプなどの能動素子と組み合わせるとさらに多彩な機能を発揮できる.ここではAWG集積化の基礎を確立するために,InP基板上のAWGの設計法と試作技術を研究した.まずビーム伝搬法によるAWG単体の特性解析・設計を行った後.より複雑な回路に対処するため散乱行列ベースのマイクロ波設計・解析ツールによる光集積回路設計を試みた.一例として複数のAWGからなる光クロスコネクトの特性解析を行い,所期の結果を得た.次に,ドライエッチングと電子線露光を駆使してInP基板上に200GHz間隔8チャンネルのAWGを試作し,比較的小さい導波損失(7.1dB/cm)とWDMデマルチプレクサとしての動作を実証した.
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