研究概要 |
本研究の目的は,本研究組織が有するミリ波帯アンテナ・回路技術をもとに,量産に適したミリ波帯セクタアンテナとその周辺回路技術を開発するとともに,環境が大きく変動したり受信端末が移動している場合の通信品質を良好に保つ超高速ビーム走査型受信システムの開発を行い,高速無線LANシステムの実現ならびに普及に資するところにある.本年度は,以下に示す知見と成果を得た. (1)平面マルチセクタアンテナの基本素子として,キャビティ付きプリントスロット八木・宇田アレーアンテナを提案するとともに,スペクトル領域モーメント法およびFDTD法を用いた特性評価法を確立した. (2)プリントスロット八木・宇田アレーアンテナを用いたマルチセクタアンテナについて,スペクトル領域モーメント法による特性評価を行った.この結果より,プリントスロット八木・宇田アレーアンテナを用いれば,金属フィンなどの突起物を配置しなくとも,セクタ間の干渉が極めて小さな平面マルチセクタアンテナを構成できることを明らかにした.19GHz帯における試作測定を行い,計算による結果の妥当性を確認した. (3)キャビティ製作の簡易化を目的として,多層基盤構造を採用し,スルーホールでキャビティを形成したプリントスロット八木・宇田アレーアンテナの試作測定を行った.この結果より,スルーホールでキャビティを製作した場合であっても,良好な特性が得られることを明らかにした. (4)超高速ビーム走査型受信システムに用いるための準光学アンテナ・ミキサについて,磁流ループアンテナで構成したシステムを提案し,3GHz帯および10GHz帯における試作測定を行った.この結果より,従来のパッチアンテナを用いたシステムと比較して,アンテナ素子の寸法誤差による特性劣化が生じにくいことを明らかにした. 以上,本年度予定していた研究課題について十分な成果が得られた.
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