粒界電子構造制御による高温用セラミックスの開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11355028
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 佐久間 健人 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (50005500)
• 研究分担者: 棚瀬 照義 三菱マテリアル(株)総合研究所, 室長(研究職)
• キーワード: アルミナ / セラミックス / クリープ / 耐熱性 / 粒界微細構造 / 分子軌道計算

研究概要

今年度は本研究の締めくくりとして、高純度アルミナの高温クリーブ試験を行い、耐熱性向上のための最適ドーパントを見出す実験を行った。ドーパントの選択は、古典的パラメータである原子価及びイオン半径を指標として行った。その結果、アルミニウムイオンと同じ形式電価である3価の陽イオンが最もクリープ特性向上の効果が大きかったが、その他の価数を有する陽イオンについては、クリーブ特性を向上させるものと、逆に劣化させるものとに分かれた。現有の高分解能電子顕微鏡やEELSスペクトルの分析から、こうしたドーパント効果は通常の原子サイズ効果や価数では整理できず、粒界における電子状態の変化に起因することを明らかにした。特に、空孔形成に伴う原子間結合力の変化は顕著であり、ドーパント効果の大きな要因となっている。こうした知見は、従来経験的に添加物・添加量を選択しセラミックスを合成する手法に対し、より理論的な材料設計指針をもたらすものであると期待される。今年度得られた知見に関しては日仏セミナーおよびRex&GG国際会議等で研究代表者が口頭発表すると共に、学術論文として国際学会誌に発表された。

研究成果

• [文献書誌] Z.L.Hong, H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma, T.Nishimura, M.Mitomo, J.Europ: "The effect of additive on the densification process and high temperature strength retention in silion nitride with Re-disilicate"J. Europ Ceram. Soc.. 22. 527-534 (2002)
• [文献書誌] H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "Vacancy effect of dopant cation on the high-temperature creep resisitance in polyerystalline Al_2O_3"Mater. Sci. Eng.. A319-321. 843-848 (2001)
• [文献書誌] J.Mimurada, M.Nakano, K.Sasaki, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "Effect of cation doping on the superplastic flow in yttria-stabilized tetragonal zirconia polycrystals"J. Am. Ceram. Soc.. 84. 1817-1821 (2001)
• [文献書誌] H.Yoshida, T.Yamamoto, Y.lkuhara, T.Sakuma: "A change in the chemical bonding strength and high-temperature creep resistance in Al_2O_3 with lanthanoid oxide doping"Philos. Mag.. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] 吉田英弘, 幾原雄一, 佐久間健人: "EDSおよびEELSによるLu微量添加Al_2O_3の粒界局所分析"日本金属学会誌. 65. 356-360 (2001)
• [文献書誌] 日本学術振興会材料の微細組織と機能性第133委員会: "材料の微細組織と機能性"日本学術振興会. (2001)