研究課題/領域番号 |
11355033
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柘植 新 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60023157)
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研究分担者 |
渡辺 忠一 フロンティア, ラボ(株), 主任研究員
北川 邦行 名古屋大学, 高温エネルギー変換研究センター, 助教授 (00093021)
大谷 肇 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (50176921)
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キーワード | 昇温熱分解 / 生分解性ポリマー / ポリ(ε-カプロラクトン) / 酵素分解 / 昇温熱分解-質量分析法 / 反応熱分解ガスクロマトグラフィー |
研究概要 |
本年度は、前年度までに構築した昇温熱分解(TPPy)測定システムを用いて、代表的な生分解性ポリマーの一種であるポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)の生分解に伴う化学構造の変化を直接追跡することにより、その生分解挙動を詳細に解析することを試みた。本実験ではポリマーの微細化学構造の違いが生分解性の挙動に及ぼす影響に着目して、試料として分子鎖中のカルボキシル末端をベンジル基で修飾して、末端構造を制御して合成したPCLを用いた。またここでは微生物によるポリマーの生分解の進行過程を模して、PCL試料をバクテリア由来のエステル分解酵素を含むリン酸緩衝液中で酵素分解試験を行い、分解試験後に回収された残留ポリマーを測定に供した。まず、昇温熱分解-質量分析法により、酵素分解前後の試料における昇温熱分解のプロファイルを比較測定したところ、酵素分解前の試料では、約280℃であった熱分解物の生成極大温度が、生分解の進行に伴って徐々に高温側へシフトし、酵素分解試験を36時間行った後に残留した試料では約30℃上昇することが分かった。このことからPCL試料中の局所的な結晶化度の違いが、酵素分解の進行に影響していることが示唆された。さらに有機アルカリ共存下での反応熱分解ガスクロマトグラフィー(反応Py-GC)により得られる、末端基由来成分の相対生成量についての情報も考慮に入れることにより、今回用いた酵素分解の条件下では、PCLの酵素分解が、試料中の非晶領域に存在する分子鎖のベンジル末端から優先的に進行することが解明された。
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