研究概要 |
ナノ局所場での化学組成や化学結合状態に関する情報を測定・解析し,材料表面のナノキャラクタリゼーション法を確立することは,先端材料の物性や機能発現機構を解明し,さらに新規高機能材料を創製する上で極めて重要である。本年度は,前年度に開発した近接場パルス励起ナノスケール表面分析装置の基本性能評価を綿密に行い,それに基づいて性能向上を図った。 まず、前年度導入した二段収束円筒鏡型エネルギー分析器を紫外励起光入射用石英窓を装着した高真空チャンバに装着し,低圧水銀灯(エネルギー6.7eV,波長185nm)を励起光源として,各種金属試料の光電子分光法についての基礎検討を行った。次いで,固体表面の電子構造の情報分析法としてより有効である真空紫外光電子分光法(UPS)について検討した。そこで,電子振動型He放電管を設計・製作し21.2eV(584Å),40.8eV(304Å)の非常に高いエネルギーを有する極超短波長真空紫外励起光を得ることに成功した。本放電管は直流高圧放電管の一種であり,低Heガス圧での安定放電が得られる特色がある。また,このような極短波長領域用の窓材は存在しないので,間に差動排気用チャンバを一段設けて,高真空測定用チャンバに装着した。 標準試料として,SiO2基板上にAuを真空蒸着した試料を用いて,その光電子スペクトルを測定した。その結果,584Å,304Åに各波長に対応する光電子スペクトルが観測できた。これから,アナライザの仕事関数=5.5eVを算出することができた。さらに,本法を超高真空測定に発展させて,パラジウムシリサイド表面の価電子領域の電子構造の測定・解析への応用について検討した。 今後,試料表面の極微小領域の光電子分光法を実現するべく,近接場顕微鏡(SNOM)用ナノピペット型光学探針による光源の微小化について,信号強度との関係などの詳細な検討を行っていく。
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