研究概要 |
本年度は,昨年度に製作した海震実験遂行のための振動試験装置付きの特殊水槽(模擬海震発生水槽)を用いて海震の模擬実験を行った。具体的には,まず海震実験水槽の圧力波伝播特性の詳細を調査するために,水中マイクロフォンを使用して,当該水槽に付随した振動装置によって水中圧力波を発生させて、水槽内圧力特性を計測した。その結果,共振周波数と考えられる周波数帯で圧力分布が急激に大きくなることを確認した。さらに,計測点を変えた計測結果から,これが進行波によるものであることも確認され,圧力波が水面と水底で共振していることが分かった。さらに,昨年度までに開発した数値計算プログラム(時間領域,周波数領域双方)の妥当性を検証するために,実験によって得られた結果と計算との比較を行った。その結果,理論上第一共振に対応する周波数で,実験においては大きな圧力分布を示さず,第二共振に対応する周波数付近で大きな圧力変動が見られた。この実験の傾向と計算の結果の不一致の原因は,圧力波の伝播速度が水温に依存しており,実際と計算で異なっていること,また、水槽の側壁が振動装置からの隔離が完全ではなく,二次的な振動源となっていることが考えられるが,詳細にはさらなる検討が必要である。また,当該水槽を使用して海震荷重計測試験も行ったが,これも側壁の振動が原因と思われる雑音が存在し,理想的な実験結果を得られるにいたらなかった。いずれにしても,未だ実施されたことのない実験のために,色々と解決すべき問題はあるが,今後それらを一つ一つ解消し,目的である海震のメカニズム解明に役立てられるという目処は立った。特に,数値計算の検証という意味で本模擬海震発生水槽はこれから威力を発揮すると期待される。
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